1.話題の幼児教育とは
多くのメディアが幼児教育を取り上げるようになりました。しかし、全ての親がその意味を深く知っているわけではないでしょう。ここでは、幼児教育の主な概要を説明します。
文部科学省の提言によると、小学校に入るまでの幼児に対して行う教育が「幼児教育」に該当します。親の中には、幼児に施す英才教育を幼児教育だと考えている人もいるでしょう。しかし、実際は幼児に行う教育全般を指す言葉です。幼稚園や保育園はもちろん、家庭や習い事教室など、さまざまな場面で実施されている教育はいずれも幼児教育だといえるでしょう。
幼児教育の目的は、子どもの好奇心や探求心を伸ばすことです。幼児期のうちに学習意欲を身につけた子どもたちは、生涯にわたって勉強の意欲を保ち続ける可能性が高まります。なお、幼児教育と似た言葉に「早期教育」があります。しかし、早期教育とはあくまでも、幼児段階から知識を吸収させ、学力向上につなげようとする試みです。幼児教育とは根本的に目的が異なっています。
脳の成長と幼児教育の適齢期には密接な関係があります。たとえば、脳科学分野の研究として知られる「スキャモンの発育曲線」と「ベイレイの知能発達曲線」では、人間の脳は3歳までに8割が完成すると提唱されています。そして、6歳までには9割が完成するとも主張されてきました。これらの脳の成長期では、「シナプス」の形成が活性化されています。シナプスとは、脳の神経細胞が発する電気信号を仲介する物質です。シナプスが多いと脳がやりとりできる情報量も増えていきます。すなわち、脳が思考面において、高度な働きをできるようになるのです。
シナプスは3歳を目安として、成人の2倍もの量が形成されます。ただし、それ以降は徐々にシナプスの量が減っていき、安定期に入ります。そのため、シナプスの量がピークを迎えている3歳ごろが、幼児教育の適齢期だといえるでしょう。なお、3歳を超えても脳の成長自体が止まるわけではありません。多くの人は12歳ごろまで、継続して脳が成長していきます。3歳ごろと比べれば効率が落ちるものの、4歳以降の幼児教育も努力次第では優れた能力を身に着けることも可能です。
2.幼児教育が必要な理由
文部科学省のような国の機関まで幼児教育を推奨しているのは、そこに多くのメリットがあるからです。子ども時代だけでなく、大人になってからの生活にも幼児教育は影響を与えます。ここからは、幼児教育の必要性を説明します。
「幼児期に人間形成の基礎が築かれる」と文部科学省は示しています。なぜなら、幼児期に経験した生活や遊びは、その後の安定した情緒を育むための土台になりえるからです。また、幼児期をどう過ごすかで、知性や社会性の基礎が変わっていくでしょう。そのため、大人が幼児期の子どもに施す教育は非常に大切だといえます。そのほか、ユニセフ「世界こども白書2001」でも、生後3年間の体験がその後の成長を左右すると書かれています。
これらの意義を踏まえて、幼児教育は人間の暮らしに大切な要素を身につけるための時間として、世界中で重要視されてきました。知識や技術、思考や判断、表現から人間性まで、幼児教育を正しく行えば、人間はさまざまな能力の基礎を獲得できます。成長の基礎が固まっていると、年齢とともに論理的思考や柔軟な発想をしやすくなっていきます。また、行動を予測したり、結果を反省したりするなどの思考の応用も自然になされていくでしょう。国際機関のOECDは「OECD教育2030」にて、反省や予測は人生で大きく役立つスキルだと提言しています。
行動遺伝学の代表的人物で、慶應義塾大学教授・教育学博士の安藤寿康氏は、遺伝と環境が人間に影響を及ぼすことを研究しています。つまり、人間の認知能力や人格は先天的な要素だけで決まるのではなく、外部との関わりによって定まっていくと安藤氏は考えました。
たとえば、身長や体重の9割が遺伝によって決まるのに対し、知能や学力は6~7割ほどに留まっています。そして、本人の性格は3~5割ほどしか遺伝の影響を受けません。逆をいえば、いかに能力の高い親がいても、子どもに何の教育も施さないなら資質は受け継がれません。一方、知力や人格に問題がある親の子どもでも、環境次第で本人の能力は伸びる可能性もあるのです。
そして、遺伝に関係なく子どもが成長していくには、脳が発達する時期に的確な刺激を与えなければなりません。すなわち、幼児教育によって、知識や経験を得られる環境づくりをすることが肝心なのです。
子どもが成長して小学校に入れば、勉強や集団行動をする機会が増えていきます。さまざまな場面で先生の指示を守ったり、長時間の学習をしたりと、規律を重んじることが求められるでしょう。幼児教育は子どもの学習意欲を高め、集団行動に必要な社会性を備えさせる時間としても大切です。もし幼児教育を経ていない子どもがそのまま小学校に入ってしまったら、急に変わった環境に適応できなくなる恐れも出てきます。いわゆる「小1プロブレム」を招き、授業中に癇癪を起こすなどの問題行動につながりかねません。
そこまでの目立ったトラブルにならなくても授業についていけるだけの集中力が備わっていなければ、学力向上に支障をきたしてしまします。小学校低学年で勉強につまずいてしまうと、今後も学力の基礎が揺らいでいきます。このような不安を取り除くには、幼児教育によって勉強をしたり、大人の話を聞いたりする体験に慣れさせておきましょう。
内閣府公表の資料によると、5歳ごろまでに人間の感情や行動の変化は原型が固まります。つまり、それまでに施された幼児教育にとって、子どもの将来が大きく変わってしまう可能性も低くありません。幼児教育と成長の関係については、1960年代にアメリカで実施された「ペリー就学前計画」の結果が有名です。この計画内で、研究者たちは子どもをしっかり幼児教育を受けたグループとそうでないグループに分けました。そして、子どもたちが40歳になるまで追跡調査を続けたのです。
やがて、教育を受けたグループは学力から学歴、収入や持ち家率などで、もう一方のグループを上回り始めました。さらに、生活保護を受けたり、逮捕されたりする確率は低くなりました。この差が示すように、幼児教育に力を入れることは子どもの人生の豊かさに影響するため、親なら無視できない行動なのです。
3.幼児教育の気になるポイント
ここまでで幼児教育の重要性は理解できたでしょう。ただ、いざ実践していくとなると疑問が出てくるものです。この段落では、幼児教育で気になるポイントを解説します。
ママ向けサービスを多数展開しninaruシリーズを運営する、株式会社エバーセンスが2021年に行った幼児教育に関する意識調査によると、96.7%が幼児教育(知育)に「興味がある」。そのうちの45.7%が「すでに始めている」と回答している結果となりました。※また、玩具メーカーとしてトップクラスの「バンダイ」が行った調査では、未就学児と小学生の子どもを持つ親の約5割が、小学校入学前から習い事を開始していました。そのうち、1番人気は水泳で、2番は学習塾です。3番人気はピアノでした。なお、1カ月あたりで習い事にかけている平均金額はおよそ1万3000円です。
3-2.幼稚園・保育園とは別に幼児教育を行う必要性はある?
親によっては「幼稚園や保育園に幼児教育を任せておけばいいのでは」と考える人もいるでしょう。ただ、幼稚園や保育園は決して、幼児教育を集中的に行ってくれる施設とも限らないのです。そもそも保育園は厚生労働省、幼稚園は文部科学省の管轄で運営されています。園によって特徴や方針は異なるものの、多くの場合、保育園は親の代わりに子どもの生活習慣を指導することに力を注いでいます。一方、幼稚園は小学校入学前に教育を始めるための「学校」です。ただ、幼稚園で習う内容は全国共通の教育課程に基づいています。
幼児教育とは特定のプログラムを専門的かつ高度に実施していくため、保育園や幼稚園では追い付かないことも珍しくありません。仮に子どもの能力を早く開発したいのであれば、民間団体が運営している幼児教室に通わせるのが得策です。幼児教室は幼稚園のように全国統一の教育を施すのではなく、独自のコンセプトに基づいて子どもの能力を伸ばしていきます。ただし、私立幼稚園なら幼児教室と同質の教育を実践している場合もあります。
場所やプログラムによって幼児教育の内容はまったく異なります。たくさんの選択肢から、何を重視すればいいか分からなくなることも少なくありません。以下、幼児教育の方法を選ぶ際、着目したいポイントを挙げていきます。
主な幼児教育の方法として、「幼児教室に子どもを通わせる」ことと「自宅で行う」ことの2種類があります。幼児教室のメリットは社会性や協調性を伸ばしやすい点です。親以外の大人である講師や、ほかの子どもたちと同じ時間を過ごすことで、子どもは他人の存在に慣れていきます。近い将来、小学校に入る予行演習としても適しています。また、教室に子どもがいる間、親は自由時間を確保できるでしょう。親の負担が軽減されるという面で、幼児教育のほうが楽な方法ではあります。
一方、自宅の教育では「内容を自由に選べる」ことがメリットです。親が市販のテキスト、通信教材を用意するため、好きなプログラムを子どもに受けさせられます。インターネット普及後は、タブレットを使った教育も珍しくなくなりました。自宅教育であれば、子どもを教室に通わせる時間がなくなるので、かえって自由度が高いとの考え方もできます。そのほか、学校に授業料を払うよりも安く済ませられる可能性が高いでしょう。
知育や語学、運動から音楽まで、幼児教育のジャンルは多岐にわたります。親は子どもの適性や伸ばしたい能力を見据え、実践するプログラムを選びましょう。たとえば、知育系の教育では、読み書きや数字などの基本を学んでいきますさらに、社会性、協調性、表現や最後までやり抜く力など、未来に必要とされるスキルを身に着けられる教室などもあるので細かく内容をチェックすることが必要です。
語学系教育では、バイリンガルの講師と一緒に過ごすなどして、子どもの語彙を増やしていきます。幼児期から語学への苦手意識を払しょくし、国際化社会でも活躍できる能力の基礎を育みます。運動系の教育では、水泳や体操などが代表的です。これらの種目は子どもの技能を高めてくれるだけでなく、身体能力向上や健康的な体づくりもサポートします。ひとつの種目を練習し続ければ、向上心も養われていくでしょう。
音楽系の教育では、歌唱やダンスといったスキルはもちろん、幼児期にしか獲得できない絶対音感を身につけられるチャンスがあります。そのほか、20世紀初頭のヨーロッパで生まれた「リトミック」も人気です。リトミックでは音楽に合わせて体を動かし、子どものリズム感や表現力、集中力を伸ばします。
4.幼児教育を行うときの注意点
まずは、「子どもが楽しめる内容にする」点です。幼児教育の目的は、成長の基礎を固めることです。そのためには、発達段階に合わないプログラムを強制しても、子どものためになりません。また、子どもが関心を持っていない勉強、習い事を押しつけるのも苦手意識の原因になります。子どもが学習そのものを嫌いにならないよう、気持ちを尊重しながらプログラムを実践しましょう。
次に、「詰め込み教育をしない」ことです。内容を詰め込むだけの教育は、子どもの自主性を打ち消しかねません。学習に対して子ども自身の興味が薄れていき、何事にも無関心な大人になってしまう恐れも生まれます。子どもが自分から学びたくなるような幼児教育を選ぶようにしましょう。
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幼児期の教育は、子どもの将来を左右しかねません。そのため、幼児教育の内容は子どもとの相性を見極めながら慎重に選びましょう。可能なら、幼児教室の無料体験もさせたいところです。幼児教室「チャイルド・アイズ」は100種類以上のさまざまな教具により、子どもの思考力を育んできました。幼稚園から中学校までの受験対策も実施しており、教育の専門家たちが学力向上をサポートしてくれるのでおすすめです。