1.幼児教育の基礎知識
そもそも幼児教育とは、闇雲に知識を詰め込むことではありません。年齢相応の知力に応じたメソッドで、子どもの「生きる力」を養っていきます。この段落では、幼児教育に取り組むうえでの基礎知識を紹介していきます。
1-1.幼児教育とは?
乳幼児期を過ぎた1歳ごろから、小学校入学前の6歳ごろまでに施す教育が「幼児教育」です。なお、場合によっては0歳児相手の教育を指すこともあります。幼児教育がその後の教育と大きく異なるのは、机に向かって知識を詰め込むような方法論を取らない点です。そもそも、幼児は勉強をする目的を理解していません。そこで、日々の生活全般を通し、生きるために必要なことを感覚的に学んでいくこととなります。
幼児教育は、生きる力の基礎を育成する時間です。その柱として、「確かな学力」「豊かな人間性」「健康・体力」などが挙げられます。特に、人間性の核を養っていくことは幼児教育における最大のテーマです。その後、人間関係を構築していくとき、幼児教育で培った能力は大きな糧になります。健全な幼児教育は人としての成長に役立つだけでなく、将来のライフスタイルにも影響を及ぼすでしょう。
1-2.早期教育との違い
幼児教育と「早期教育」を一緒にしている保護者も少なくありません。確かに、就学前の子どもに対して行う教育、という点は共通しています。しかし、厳密には目的が違うので混同しないようにしましょう。幼児教育の目的は人間形成と、今後の学習能力の基礎づくりです。おおまかにいいかえれば、「生きる力」を固めることだといえます。
一方、早期教育は勉強、芸術、スポーツといった、専門分野のスキル向上を目的にしています。そのため、勉強する内容も知識の習得、学校教育の先取りが中心です。何より、主体のあり方において、両者は大きく異なります。幼児教育は子どもの気持ちを優先に考え、成果よりも好奇心などの気持ちを育んでいこうとします。それに対し、早期教育は保護者が主体になって、子どもに学習カリキュラムを徹底させていくことが一般的です。
2.幼児教育の種類を解説!
さまざまな「メソッド(種類)」が、幼児教育の分野では提唱されるようになりました。いずれも、力を入れている部分やコンセプトが異なるので、保護者がしっかり見極めていきましょう。以下、幼児教育の代表的なメソッドを紹介していきます。
2-1.【日本式】幼児教育
日本発祥の幼児教育メソッドもたくさんあります。以下、具体例を挙げていきます。
教育学者、石井勲博士が確立させたメソッドです。石井博士は「言葉が思考を形作る」という説を唱えてきました。すなわち、幼少時にたくさんの言葉を覚えれば、その後の思考力に好影響を与えると考えたのです。そこで、記憶力が優れている幼少時のうちに、効率的に語彙力を高めようと思い立ち、「石井式教育法」が生み出されました。
石井式教育法では、絵本やカードを学習に用います。そうやって子どもと遊びながら、言葉や文字をしっかりと記憶させていきます。このメソッドでは言語能力を中心に、分析力や判断力も養えるのが特長です。また、創造力や洞察力、集中力の向上にもつながります。
女子プロゴルファー、横峯さくらの伯父である横峯吉文氏が提唱しているメソッドです。横峯氏は「心の力」「学ぶ力」「体の力」に注目しました。彼は、これら3つが子どもの自主性の礎になると考えています。そして、これらを育むことにより、子どもの可能性は広がっていくというのがヨコミネ式の中心にある理論です。さらに、横峯氏は子どもの特徴として、「競争したがる」「真似したがる」「少し難しいことをしたがる」「認められたがる」という傾向を挙げていきます。すなわち、これら4つを刺激すれば、子どもは自分から学びの姿勢を見せると唱えてきました。
2-2.【海外式】幼児教育
日本でも海外発祥の幼児教育メソッドは取り入れられてきました。中には、定番のひとつになったものもあります。以下、海外の幼児教育メソッドを紹介していきます。
ローマ大学で初めて女性医学博士になった、マリア・モンテッソーリにより生み出されたメソッドです。モンテッソーリは優れた教育者でもありました。彼女のメソッドは、100年以上前から現代まで、世界中で支持されています。メソッドの目的は、子どもを「責任感があり、優しく、自立した人間にする」ことです。また、向学心を忘れない人間を育てるメソッドとしても評価され続けています。
モンテッソーリ教育の特徴は、子どもの年齢に応じて知的好奇心を刺激していく点にあります。子どもが自発的に学ぶ手助けとして、おもちゃと教材を組み合わせていることでも有名です。日本でも、多くの過程でモンテッソーリ教育は取り入れられてきました。そして、「天才」と称賛される、将棋の藤井聡太棋士も受けていたことで一気に知名度が高まりました。
海外発祥の教育メソッドとしては、日本でも比較的知られているものに該当します。哲学者であるルドルフ・シュタイナーが提唱し、子どもを成長過程で分類する理論が特徴的です。具体的には、0~21歳を7歳ずつ、3つの時期に分けます。そして、それぞれの発達段階に合わせて教育カリキュラムを施していきます。シュタイナー教育の核になっているのは、「安心感のある静かな環境」です。そのため、教育現場が自然に囲まれているケースも少なくありません。また、シュタイナー教育では規則正しい生活リズムを非常に重視しています。
ほかのメソッドとの大きな違いを挙げるとすれば、読み聞かせをしないことでしょう。そのかわり、子どもたちには物語を伝えて想像力を伸ばしていきます。同時に、集中力の向上も目指します。
イタリア北部の町で生まれ、世界中に広がっていったメソッドです。現代社会において、米国大手企業の社内スクールでも応用されています。ただ、その基本にあるのはあくまでも幼児教育です。子どもの個性を伸ばすことに重きを置いており、思考能力やコミュニケーション能力も養っていきます。幼児段階から、話し合いをする機会を積極的に設け、「自分で物事を選択する」という経験を与えていくことがメソッドの中心です。その結果、子どもの自主性や協調性が高められ、周囲に流されない人間になっていきます。
レッジョ・エミリア・アプローチ教育では、子どもたちが実際に保育施設で過ごす風景を撮影する場合も少なくありません。編集されたその映像は教材として、後の世代に受け継がれていきます。この手法は「ドキュメンテーション」と呼ばれています。
世界一、子どもが幸せに暮らしているとされているオランダで、政府教育評価機構のCitoが唱え始めたメソッドです。ピラミッド型のロジックが、名称の由来です。ピラミッドの土台には「やる気」「保育者側の主体性」「寄り添う気持ち」「あえて距離をとる」という概念があり、その上に積み上げていく形で子どもの人間教育を行っていきます。保育室で応用プロジェクトを施すのも特徴で、その中でも「積み木」「絵本」といった教育ツールが細かく指定されています。最終的には、想像力や決断力、自己解決能力に優れた子どもにするのが目的です。
なお、ピラミッドメソッドでは子どもだけでなく、保育者の自主性も伸ばせます。保育者が個性の重要性に気づくことで、子どもも好影響を受けるという循環を生み出せるのです。
アメリカで人間能力開発研究所を創ったグレン・ドーマンによって確立された教育法です。ドーマンは、子どもの脳にほどよく刺激を与えることで、能力を開発できると考えました。そのため、乳児期から数や言語、スイミングなどを積極的に学ばせることをよしとしています。また、知育の分野で引き合いに出る機会も多いメソッドです。ドーマンメソッドでは、理解力や判断力の高い人間を目指しています。また、子どもの知力は良好な親子関係の礎になるとも提唱しています。
モスクワ郊外に住んでいたニキーチン夫妻が編み出したメソッドです。ニキーチン夫妻には7人の子どもたちがいました。そして、子どもたちを育てる中で、理論を発見し、実践していきます。ニキーチン教育は固定観念にとらわれず、子どもの自由な思考力を養います。たとえば、あえて難しい課題を子どもに与え、自主的に解決させようとするなどの取り組みが代表的です。ときには、子どもをリスクにさらすこともいといません。ただ、「子どもを信頼することから能力は花開していく」とニキーチン夫妻は考えたのです。そのため、一般的な教育理論とはかけ離れている部分もたくさんあります。
そのほか、積み木をはじめとした知育遊びを用いるのも特徴のひとつです。ニキーチン教育では、想像力や自分で考える力、課題解決能力向上を目指します。また、子どもたちが複数の事象を分析し、結論を導く力も伸ばしていきます。
3.幼児教育において大切なこと
まずは「知的好奇心を大事にする」ことです。好奇心のある子どもは将来的に、自らいろいろなことを学ぼうとする人間へと育っていきます。そして、ほとんどの子どもが幼児期から好奇心を持ち合わせています。それなのに、大人たちが見逃していては子どもの能力は伸びていきません。子どもの気持ちや興味、関心を感じ取り、好きなものに熱中できる環境を整えてあげましょう。
次に、「親子で一緒に向き合う」ことも重要です。幼児にとって、教育もまた保護者との大切なスキンシップです。「お母さんといられる」「お父さんと話せる」と思えば、子どもは教育の時間が楽しみになっていきます。そして、難しい課題でさえも、喜びを感じながら取り組めるようになるのです。
「達成感」もカギだといえます。子どもが何らかの問題を解決できたときはしっかり褒めてあげましょう。そうやって達成感をかみしめることで、子どもの自信へとつながります。ただし、成果に対してだけ褒めていると、かえって子どもの自信喪失を招きかねません。子どもの努力を認めてあげる姿勢が大切です。
そして、「五感」を意識した教育を施しましょう。幼児期に机の上だけで学習をさせても、子どもは何のためにやらされているのか理解できません。その結果、生きる力を養いにくいのです。それ以外にも、日々の暮らしの中で経験できる、さまざまな学びを子どもに与えていきましょう。食事や遊び、読み聞かせなどを通して、幼児教育を施すことは十分に可能です。
この記事では、幼児教育の必要性やメソッドを説明してきました。いずれも方法論や目的が違うので、子どもの個性と照らし合わせながら選んでいくことが大事です。もしも子どもが自主的に取り組んでくれるメソッドを見つけ出せたなら、潜在的な生きる力が存分に引き出されていくでしょう。何より大切なのは、子どもが「楽しい」と思ってくれることです。楽しい気持ちがあれば、大人が強制しなくても子どもは積極的に学んでくれます。そのサイクルを作るには、プロフェッショナルに相談してみるのもひとつの方法です。
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