まずは、「子どもの素直な姿を見たい」という理由が挙げられます。小学校の先生たちは、入学してくる子どもたちに充実した生活を送ってほしいと考えています。そのためには、ほかの生徒たちと友好的な関係を築き、お互いを刺激し合えなくてはなりません。また、積極的に学校を楽しむ気持ちも大切です。こうした子どもの人間性を見極めるには、日常的に何を考えているのか、どのようなことに興味を持っているのかを知りたいところです。また、友達と何をして遊んでいるのかも気になります。これらを確かめる機会が、受験における面接なのです。
子どもに対してはそのほか、「思考力」や「傾聴力」も見られています。質問内容を落ち着いて考え、しっかり答えられるのかの能力を試されています。理解力やマナー、挨拶や敬語といった、基礎的な生活習慣も重要なポイントです。そして、保護者の面接で学校側は、家庭と教育方針がかけ離れていないかを確かめます。家庭環境やしつけ、志望理由なども、親に投げかけられる質問です。
小学校によって微妙な違いはあるものの、面接の形式にはおおまかな流れがあります。以下、詳しく説明します。
まず、小学校は子どもから話を聞きます。試験当日、個別テストや制作と一緒にスケジュールを組まれていることが大半です。質問されるのは、氏名や受験番号、住所や幼稚園名といった、基本情報、一緒に来た人などです。そのうえで、一般常識、道徳に関する質問もなされます。通常、子どもの面接は保護者と同じ日に予定されます。ただし、保護者とは別々に面接することで、子どものありのままの姿を見られる流れです。
子どもの面接では、緊張せずに楽しく話せるかがカギです。また、保護者が口を挟まないので、家庭での過ごし方や両親との関係について、素直な答えを求められることも珍しくありません。そのほか、お話づくりや絵本の内容について聞かれることもあります。なお、多くの面接では、ひとつの質問を掘り下げ、詳しい説明を求められる傾向が顕著です。
ほとんどの学校が、2~3人の面接官と父母による面接を実施しています。質問数は「志望理由」「しつけや教育の方針」など、2~3問程度です。そのかわり、回答に対し詳しい説明を求められることも少なくありません。矛盾点があれば面接官の記憶に残ってしまいます。子どもの生活環境、教育問題や学校の方針についてしっかり意見を持っておかないと、面接官に評価されにくいでしょう。時代とともに、父親が教育に対し何を考え、貢献しているかを聞く学校も増えてきました。両親ともに、子どもの教育に熱心な家庭が好印象を得るようになりつつあります。
子どもと保護者が一緒に受ける面接は、形式がいろいろです。試験日以前に予定されているケースもあれば、試験日以前から試験終了後にかけ長期間で面接スケジュールを組んでいく学校も少なくありません。親子での面接では、それぞれの関係性が見られています。質問自体は、それほど変則的ではありません。ただ、もしも子どもが答えられなかったときに、保護者がどう反応するかなど、日常の姿をチェックされます。子どもさえしっかり答えられればいいというわけでもなく、保護者にも対策が必要です。
国立の小学校に多い形式です。個別に面接するのではなく、複数の家庭が一緒に面接を受けます。集団であるがゆえ、周囲の意見に動揺してしまう保護者も少なくありません。自分の意見に自信が持てなくなることもあるでしょう。それでも、落ち着いて素直な考えを述べられる保護者が、面接官から評価されます。なお、集団面接では、「これに答えられる方はいますか」と、グループ全体に質問をされることもあります。そのような場合、できるだけ積極的に反応して面接官に好印象を与えましょう。
第一印象は、面接の結果を左右する条件です。どれほど回答がしっかりしていても、子どもや保護者の服装がだらしなければ面接官は評価してくれません。ただ、高級品を身にまとえばいいわけでもなく、面接に合った服装があります。この段落では、小学校受験の面接で学校側に好まれやすい服装を解説していきます。
知的で優しく、清楚な印象を与えることが重要です。逆に、派手なカラーのスーツは面接官から好まれません。無難に、濃紺を基調とした服装を目指しましょう。パンツスーツも決して悪くはないものの、スカートのほうがやわらかいイメージを持たれがちです。スカートの丈は、座ったときに膝が隠れる程度を目安にします。スーツのジャケットは、まるみのある襟のものを選びます。そして、生地と同じ色のくるみボタンがついていると理想的です。一方で、体にフィットしすぎるようなスーツは避けます。ラインがくっきり浮かび上がりすぎると、フォーマルな場に相応しくなくなるからです。
面接の場に、バッグや手帳といった小物類を持っていくのも、身だしなみとして重要です。いざメモしなければならないような内容を伝えられたとき、手ぶらでいては良い印象が残りにくいでしょう。そのかわり、ブランド名がわかりやすすぎるものは得策といえません。高級品が悪いわけではないものの、これみよがしな見え方になると面接官の心証を害します。
服装の基本はスーツです。そして、清潔感を与えつつ、信頼できる大人であることをPRしましょう。無地の紺色にするのが無難です。合わせるワイシャツも、派手な色は好まれません。ビジネスシーンでは薄いピンク、ブルーのシャツも着られているものの、面接の場では避けるべきです。刺繍もポイントもない、ただの白いシャツにしておきます。ネクタイもまた、無地のタイプを選びます。父親の場合、面接官は意外にも足元をチェックしてくることが少なくありません。新品もしくは丁寧に手入れした革靴を用意しましょう。そして、長めのビジネスソックスを合わせます。
女の子であれば、ブラウスにジャンパースカートを合わせるのがおすすめです。ただ、それだけではカジュアルな印象になりかねません。上にボレロやカーディガンを合わせて、フォーマルな雰囲気を演出します。ちなみに、短すぎるスカートも厳禁です。膝が隠れる丈のものを選びましょう。男の子であれば、スーツとシャツで面接に挑むのが定番です。あるいは、白いポロシャツと紺のVネックベスト、紺かグレーの短パンをコーディネートするのも、真面目な服装になります。ちなみに、子どもの場合はネクタイをつけなくてもマナー違反にならないといえます。
小学校受験の面接では、定番の質問があります。もちろん、印象を良くしようとして一から十まで嘘をつく必要はありません。ただ、正直に答えすぎて評価を落とすのも考えものです。面接官の意図を理解しつつ、適切な答え方を用意しておきましょう。この段落では、小学校の面接でよくある質問と答え方を紹介します。
必ずといっていいほど、面接で聞かれる質問のひとつです。子どもの情報の中でも、もっとも基本的な項目なので、普段から暗唱できるように導いてあげましょう。面接の緊張感の中でも、スラスラ答えられるほどなじませておくことが大事です。なお、この質問がなされる意図として、「保護者の配慮を確認したい」という点が挙げられます。私立や国立の小学校に子どもを通わせる場合、自宅から遠くなってしまうことが少なくありません。長い距離を歩いたり、電車に乗ったりする子どもも多いでしょう。そのため、保護者が緊急時の配慮をしているかどうかが問われます。
もしも子どもが住所電話番号をすぐにいえないようなら、保護者の危機管理が行き届いていないということです。子どもが迷子になる可能性を考えていないと思われても仕方がありません。また、保護者が子どもを教育していない印象も与えてしまいます。ちなみに、応用編として、近隣に暮らす親類縁者の存在を聞かれるときもあります。住所電話番号と一緒に、子どもに教えておくのが賢明です。
質問の意図は、「母親の子どもに対する接し方、考え方」を知ることです。母親に直接聞いても、取り繕った答えが返ってくる可能性は高いでしょう。そこで、子どもから本音を引き出そうとして、この質問がなされます。決して、叱られること自体が悪いわけではありません。むしろ、保護者の教育が行き届いている証ともいえます。ただし、母親の都合で叱られていたり、自主性を押し殺されていたりした場合、保護者の評価が低くなってしまいます。
逆に、評価されやすいのは「食事のマナーが悪い」「夜更かしをしたがる」など、生活に関する事柄です。幼い子どもを育てる際、意識するべき点をしっかり叱っている母親は好印象を与えられます。ただ、こうした事情をそのまま子どもに伝えても、完璧には理解できないでしょう。そこで、面接対策では「お母さんとの約束は大切」「それを破ったら叱られてしまう」という2点を強く伝えておきます。そうやって、子どもが自分の意思で回答できるように導きます。
まず、「いいえ」と子どもに答えさせる必要はありません。幼い子ども同士が一緒に暮らしていて、けんかもしないのは不自然です。面接官も「いいえ」という答えは求めていません。兄弟げんかも成長の過程なので、無理に誤魔化さないでおきましょう。子どもは兄弟とけんかしているうち、感情のコントロールを覚えていきます。また、相手に悪口をいわれて悔しがったり、「これからは相手を大切にしよう」と思いやったりするのも成長につながります。面接官は、こうした子どもの実感を知りたがっているのです。
また、兄弟げんかは社会性や協調性を学ぶ最初の機会ともいえます。兄弟ともめながら、子どもは「自分の思い通りになることばかりではない」と理解していきます。面接対策では、これらの気づきを子どもの言葉で表現できるようにしてあげましょう。そのほか、面接官は「そのようなとき、お母さんに何を言われましたか」と突っ込んでくることもあります。この場合、面接官は解決法を通して、親子関係や子どもの成長を確認しようとしています。こちらも、子どもと話し合っておくことが肝心です。「けんかをするよりも、仲よくしたほうが楽しい」といった、兄弟への思いやりがある答えを返せると、理想的です。
あえてネガティブな状況を子どもに伝え、「そのときはどうする」と聞いてくる面接官もいます。ここでチェックされているのは、子どものモラルと協調性です。まずは、子どもが自分に責任があると理解していなければなりません。そのうえで、相手に事件を打ち明けられ、謝罪できるかが問われています。また、子どもの回答から、家庭でのしつけが行き届いているかも見えてきます。普段の生活や、心の優しさなどを判断する材料にもなりえるのです。
たとえば、「ごめんなさいといいます。それから、お母さんに伝えます」と答えたとすれば、家庭で子どもにそう教えているということです。子どもを通して、保護者たちの教育方針、人間性も浮き彫りにされます。ただし、すべてを「お母さんに聞いてみる」と答えているようでは、子どもに主体性がないと思われかねません。子どもの気弱さも伝わってしまいます。「とりあえずお母さんに相談すればいい」という教え方はしないよう、注意しましょう。
ここまで、小学校受験の面接内容について説明してきました。共通していえるのは、面接対策とは付け焼刃でできるのものではないという点です。面接官はひとつの質問について、深く掘り下げて子どもの本音を聞き出そうとしてきます。その場限りの答えを暗唱させるだけでなく、常日頃から、子どもにしっかりとしつけや教育を施しておかなくてはなりません。そうやって、子どもに確固たる思考や価値観を伝えていくことが一番の面接対策なのです。
知育・受験対策の幼児教室「チャイルド・アイズ」では子どもの思考力を育み、自主的に行動していけるサポートを20年以上に渡り行ってきました。受験対策コースでは、志望校に合わせた面接練習と指導を子どもだけでなく保護者に対しても実施しています。小学校受験について個別相談も承っています。不安や悩みを抱え込まずにまずはお気軽にお問合せください。